ビットコイン分裂

ビットコイン分裂

以前から噂されていたビットコインの分裂騒動がついに現実になり、2017年8月1日ついにBitcoin Cash(ビットコインキャッシュ)が誕生しました。

一旦収束に向かうかと思われたビットコインのお家騒動は、ビットコインキャッシュの誕生という局面を迎えました。

システムの変更をめぐり対立

もともとビットコインはスケーラビリティー(処理能力の問題)という大きな問題を抱えていたため、ビットコインを取り巻く関係者の間で以前から議論の的になっていました。

この問題を解決しなければいけないというのは関係者間での共通意見だったのですが、その方法を巡ってビットコインの生みの親であるSatoshi Nakamotoからプロジェクトを受け継いだ形のコア開発者コミュニティーと、膨大な計算能力を提供してビットコインのネットワークを維持している大手マイニングプールの間で意見が割れます。

まずコア開発者側は、ビットコインのこれまでの使用を引き継ぐ形のSegwit(セグウィット)というソフトフォーク(互換性のあるアップデート)を前提とした改善案を提案します。そしてこの提案の中には、もう一つビットコインが抱える大きな問題を解決する内容が含まれておりました。

その問題とは、ビットコインを支えるブロック生成能力が、特定の大手マイニングプールによって寡占状態になっている現状を危惧する問題です。この状態では51%攻撃といわれる取引を不正にコントロールすることが可能となるため、その要因も取り除いてしまおうというもので、いたって健全な発想だといえるでしょう。

しかしこの部分に、世界最大のビットコインのマイニングプールである中国の大手マイニングプール『Ant Pool』を率いるBitmain社が反発します。

ビットコインのマイニングは膨大な計算量を誇るコンピューターを使って行われていますが、Bitmain社はマイニングの処理スピードを向上させる『ASICBoost』という特許技術を用いたマイニングマシーンの開発元です。

ASICBoostはマイニング時の消費電力を30%削減して計算効率を30%上昇させるといわれる技術で、PCに取り付けるとマイニングが有利になるといわれ、現在ビットコインの約7割のマイニング機械は、Bitmain社の製品だといわれております。

コア開発者側の提案は、この『ASICBoost』を使ったマイニングを無効とする方法を含めて、一部のマイニングプールによるマイニングの寡占状態とスケーラビリティー問題の両方を解決しようというわけです。

お察しの通りこの提案が通ってしまうと、Bitmain社にとってはマイニングにおいての優位性が損なわれるばかりか、『ASICBoost』が売れなくなってしまいます。

これを阻止するべくBitmain社らの大手マイニングプールでは、ハッシュパワーとよばれる膨大な計算能力を盾に、コア開発者側の対応によってはハードフォーク(互換性のないアップデート)を選択するという姿勢をみせていた。

このような利害関係が入り混じって、ビットコインコミュニティーの中心的な存在である2つの対立構造が顕著になりました。

NYA合意

Satoshi Nakamotoからプロジェクトを受け継ぎ、ビットコインの立ち上げ期から関わってきたコア開発者コミュニティーである『Bitcoin Core』に対して、大手マイニングプールを率いるBitmain社は『Bitcoin Unlimited』を立ち上げて、双方譲らずの状況が続きます。

こうした状況に業を煮やしたBitcoin Core側の開発者や一部のユーザーは強硬策にでます。『2017年8月1日にマイナーの同意なしで強制的にSegwit(セグウィット)を導入してソフトフォークを実施する』という取り決めを行い、Bitcoin Unlimited側のマイナーらに圧力をかけます。

この展開に懸念を抱いたビットコインコミュニティーの関係者は、8月に先立って5月にニューヨークで『NYA』という合意形成のための会合を開きました。

そこで両者の妥協案ともいうべき『Segwit2x(BIP91とも呼ばれる)』が提案され合意されます。

これで事態は収束に向かうのか・・・と思いきや、NYA合意はBitcoin Core以外の関係者で行われたため、当然ながらBitcoin Core側はこのSegwit2xという提案を受け入れておらず、8月1日以降ビットコインはどうなるのかと情報が錯綜していきます。

新たな展開

Bitcoin Core側の開発コミュニティーが提案するSegwit(UASF)が行われるのか、それともBitcoin Unlimited側も合意(NYA)したSegWit2Xの案が行われるのか、8月1日が近づくにつれてさまざまな憶測が飛び交います。

そんな中、新たな展開ともいうべきビットコインのハードフォーク(UAHF)を行い、ビットコインキャッシュという新たな仮想通貨を立ち上げるという声明が中国の大手マイニングプールから発表されます。

Bitcoin Unlimitedを主導するBitmain社は、あくまでもビットコインキャッシュについては中国のマイニングプール兼取引所であるViaBTCがリードしているプロジェクトであると主張、Bitmain社との関係性を否定しております。

さて、この段階で複雑化して良く分からなくなってきた人のために、ここで一旦それぞれの立場をまとめてみましょう。

Bitcoin Core(ビットコインの立ち上げ期から関わってきたコア開発者コミュニティー)
あくまでもSegwit(UASF)を行い、ビットコインの立ち上げ当初からの理想を追求する『民主的な通貨』としてビットコインを良くしていきたいという考え方。

Bitcoin Unlimited(膨大なハッシュパワーを誇る大手マイニングプール側の関係者)
NYAを支持してSegWit2Xをサポートしていくという立場をとっており、ビットコインの理想というよりマイニングによって得られる経済合理性を担保しながら、ビットコインのアップデートを行いたいという考え方。

中国のマイニングプール兼取引所ViaBTC
Bitcoin CoreのSegwit(UASF)とBitcoin Unlimitedが支持するSegWit2Xはさておき、8月1日にハードフォーク(UAHF)を行いビットコインキャッシュという新たな仮想通貨を立ち上げると発表。実質Bitcoin Unlimited側の立場といえる。

ビットコインキャッシュ誕生

この3つの案がそれぞれの立場で進行していく中、8月1日にビットコインから分岐してビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash/BCC/BCH)が誕生しました。

当然ながらビットコインキャッシュの開発には、ビットコインの立ち上げ期から関わってきたコア開発者コミュニティーは全く関与していません。そのためBitmain社のASICBoostを無効にするSegWitコードは実装されておらず、ビットコインキャッシュのマイニングにはASICBoostの使用が可能となっています。

ハードフォーク実行後も大きなトラブルはなく、ビットコインは最高値を更新し続けていきます。ハードフォークというと、イーサリアムの分裂騒動を思い出す人も多いと思いますが、あの時と同様に一部の取引所を除いて、8月1日の分岐以前にビットコインを保有していた人には、同じ数だけのビットコインキャッシュが付与されました。

ビットコインキャッシュの国内の取り扱い

国内の取引所ではビットフライヤーで8月2日に取り扱いが開始されております。

しかし現在のところビットフライヤーでは、ビットコインキャッシュの売買はできますが、日本円で買うことはできないので、まずビットコインを買ってからそのビットコインでビットコインキャッシュを買う必要があります。

ビットコインとビットコインキャッシュの今後

ビットコインキャッシュが誕生したことにより、コア開発者側と主要マイナー側は、イーサリアムとイーサリアム・クラシックのように、それぞれの立場で対立していくことでしょう。

ビットコインからスピンオフしたビットコインキャッシュは、スケーラビリティー問題を解決して新たな仮想通貨に生まれ変わりました。

一方のビットコインは、コア開発者コミュニティー(Bitcoin Core)主導のもと、Segwit(UASF)でソフトフォークを行い、スケーラビリティー問題を解消できるため、高騰していた取引手数料も下がると予想されます。

ビットコインキャッシュとの分岐後も依然として投機対象としての人気が高く、決済手段として利用できる店舗も広がりつつあるビットコイン。今後の動向に注目が集まりますが、これからも仮想通貨の主役であることに間違いはないでしょう。

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