ビットコインのハードフォーク事情

ビットコインのハードフォーク事情

2017年10月24日、ビットコインが再び分岐して、ブロックナンバー491,407個目のブロックから予定通り分岐が行われ、ビットコイン・ゴールド(BTG)が誕生しました。

ビットコインは8月のハードフォークで、ビットコイン・キャッシュ(BCH)が誕生したばかりですが、来月11月にも更なるハードフォークが予定されており、これが実行されるとビットコインから派生した仮想通貨は3つになり、ビットコインを含めるとビットコイン系の仮想通貨は4つ存在することになります。

ビットコインに次ぐ時価総額を誇り、ビットコイン同様に知名度が高いイーサリアムも今月にハードフォークを行い、ここにきてまた仮想通貨のハードフォークに注目が集まっているようですが、一概にハードフォークといっても、ハードフォークを行う目的や技術的なアプローチは異なっております。

そこであらためて仮想通貨がハードフォークを行う理由と、ビットコインのハードフォーク事情を簡単に説明します。

ハードフォークはなぜ行うのか?

仮想通貨のハードフォークとは『互換性のないアップデート』のことを指します。スマートフォンを持つのが当たり前の時代、OSやアプリケーションのアップデートは日常的に行っていると思いますが、デジタルの世界で行われるアップデートは何らかの不具合を解消したり、新しい機能を追加する時などに行われます。

仮想通貨のハードフォークの目的も、基本的にはOSやアプリケーションのアップデートと同じといっていいでしょう。ビットコインの場合、取引量が増加するにつれて取引の処理能力が遅延するというスケーラビリティー問題を抱えていました。スケーラビリティー問題という不具合を解消するために、アップデート=ハードフォークを行うのです。

しかし仮想通貨はハードフォークを行うことによって、新たなコインが誕生しています。この辺がOSやアプリケーションのアップデートとは異なり、少し分かりずらいところかもしれません。

アップデートを行い、不具合を解消して新たな機能が付け加えられたアプリケーションがバージョンアップするのではなく、別の新たなアプリケーションが誕生するというのは、アップデートという概念とは違う気がしますね。

ハードフォークで新たな仮想通貨が誕生するわけは?

なぜハードフォークによって新たなコインが生まれるのでしょうか?あくまでもビットコインに代表される仮想通貨そのものは、ブロックチェーン上に記録されている『データ』に過ぎません。ハードフォークというのは、仮想通貨の取引履歴を記録するブロックチェーンというアプリケーションのアップデートと考えると分かりやすいと思います。

ブロックチェーンとは取引の承認記録を含むデータを、一定のサイズでブロックごとに記録したものが、チェーンのように一続きに繋がったものです。

しかしビットコインのように取引が急激に増加したりすると、ブロックサイズなどが原因でさまざまな問題がでてきます。取引が増加するということは、単純に記録するデータの量も増加しますよね。

そこでブロックサイズや仕様を変更して、ブロック自体をバージョンアップして対応しようというわけですが、それまでのブロックと異なるサイズや仕様のブロックになると、ブロック同士の互換性がなくなってしまいます。

ブロックチェーンの性質上、互換性のないブロック同士を一続きにすることはできないので、何らかの変更が加えられて互換性がなくなったブロックは、新たなチェーンに分岐(フォーク)します。

分岐した時点で同じ取引履歴のデータを保持する2つのブロックチェーンが存在することになります。仮想通貨はブロックチェーン上に記録されたデータなので、分岐した新たなブロックチェーンと、元のブロックチェーンが並行して存在していくことになれば、それぞれのブロックに記録されるデータ(仮想通貨)も存在することになります。つまりブロックチェーンの分岐(ハードフォーク)によって、新たな仮想通貨が誕生することになるのです。

しかしながらハードフォークによって必ずしも新たな仮想通貨が誕生するかというとそうではありません。ハードフォークにより2つのチェーンに分岐しても、元のブロックチェーン・ネットワークに参加し続ける人がいなければ、実質的に元のブロックチェーンは消滅することになり、新たに仕様変更されたブロックチェーンがこれまでの取引履歴を引き継いで行くことになります。

ビットコインのハードフォークその① ビットコイン・キャッシュ(BCH)誕生

ハードフォークの事前知識はこのぐらいにして、具体的にビットコインのハードフォーク事情についてみていきましょう。

仮想通貨という新たな価値が世界的に認知され始め、2017年は仮想通貨元年といわれるほど、ビットコインを始めとする仮想通貨に大きな注目が集まりました。その中でもビットコインの価格高騰はとどまることを知らず、他の仮想通貨に比べて圧倒的な高値で取引されています。

急激に増加するビットコイン・ネットワークを支えるコミュニティーには、大きな影響力を持つ2つのコミュニティーが存在します。ビットコインの立ち上げ期から関わってきたコア開発者コミュニティー(Bitcoin Core)と、膨大なハッシュパワーを武器にビットコインのネットワークを支えるマイニング・プール(Bitcoin Unlimited)。

この2つの主要なコミュニティーが、ビットコインが抱える問題の解決方法を巡り対立します。ビットコインは立ち上げ当初の思想とは異なり、現在ビットコイン・ネットワークを支えているのは中国のマイニング・プールで、すでに寡占状態となっています。

こうした背景は以前からビットコイン・コミュニティーの間で問題視されており、ビットコインの立ち上げ当初からの理想を追求してビットコインを良くしていきたいという考え方の開発者コミュニティー(Bitcoin Core)は、スケーラビリティー問題と一緒に、このようなマイニングの寡占状態も改善するアップデート案を提案します。

マイニングによって得られる経済合理性をなんとしても担保して、ビットコインのアップデートを行いたいBitcoin Unlimited側は反発。双方譲らずの姿勢は平行線を辿り、事態は混乱していきます。

そんな中、Bitcoin Unlimited側に近い中国のマイニング・グループが、ビットコインのハードフォークを強行。コミュニティーの対立から、ついにビットコインは新たな仮想通貨ビットコイン・キャッシュと分裂することになります。

ビットコイン・キャッシュへの分岐後も大きなトラブルはなくビットコインは高騰を続け、分岐以前(8月1日以前)にビットコイン(BTC)を保有していた人たちは、それと同数のビットコイン・キャッシュ(BCH)を得ることができました。

ビットコインのハードフォークその② ビットコイン・ゴールド(BTG)誕生

ビットコイン・キャッシュ(BCH)の誕生から3ヵ月にも満たない2017年10月24日、再びビットコインはハードフォークを行いビットコイン・ゴールド(BTG)に分岐しました。このハードフォークはビットコイン・キャッシュの時とは異なり、考え方の相違や利害関係が入り混じってコミュニティーが分裂したわけではありません。

ビットコイン・ゴールド(BTG)は香港のマイニング・グループによって開発が進められ、新しいコンセンサス・アルゴリズムが採用されており、現在ビットコインが抱えるマイニング環境の問題(中国のマイニングプールによる寡占状態)を改善するための、フレンドリーなハードフォークといわれています。

ハードフォークを行った背景は違いますが、ビットコイン・キャッシュ(BCH)もビットコイン・ゴールド(BTG)もビットコインから派生したアルトコインという点では同じです。しかしハードフォーク直後から取引やマイニングが行われたビットコイン・キャッシュ(BCH)とは違い、ビットコイン・ゴールド(BTG)は分岐はしたものの、現時点(2017年10月31日)ではまだ取引が行われていません。

ビットコイン・ゴールドは幾つかの問題が指摘されており、ビットコイン・ゴールドは未完成のまま分岐したことでこのような状態となっていますが、11月の中旬までには完成予定とされているので、完成を待ってビットコイン・ゴールドが稼働することになりそうです。

ビットコイン・ゴールドが今後どのような発展をしていくのか注目されるところですが、仮想通貨の世界ではハードフォークした仮想通貨を売却して得る利益は『分岐収益』といわれ、この分岐収益を目的としたハードフォークは『投機的ハードフォーク』と呼ばれます。

ビットコイン・ゴールドにはブロックのプレマイン(公開前にマイニングしたブロック)が含まれていて、トークンが事前に開発者の手元に渡ることになります。

このような事からビットコイン・ゴールドは投機的なハードフォークという指摘があります。例えばビットコインは総発行数が2100万BTCと決められていますが、ハードフォークを行えばいくらでも総発行数を増やすことが可能になってしまいます。仮想通貨最大の時価総額を誇るビットコインが、投機的ハードフォークの対象として大きな魅力があるのは間違いないでしょう。

ビットコインのハードフォークその③ Segwit2X

2017年5月23日、対立するビットコイン・コミュニティー(Bitcoin CoreとBitcoin Unlimited)の状況に懸念を抱き、ビットコイン・コミュニティーの関係者は、ニューヨークでNYA(New York Agreement)という合意形成のための会合を開きました。そこで両者の妥協案ともいうべき『Segwit2x(BIP91とも呼ばれる)』が提案され合意されます。しかしNYA合意はBitcoin Core以外の関係者で行われたため、Bitcoin Core側はこのSegwit2xという提案を受け入れておりません。

既にSegwit2Xへのカウントダウンが始まっているようですが、Segwit2Xによるハードフォークを行う必要があるのでしょうか。そもそもNYAが合意された時点では、ビットコイン・キャッシュ(BCH)もビットコイン・ゴールド(BTG)も存在しておりませんでした。本来このSegwit2xが行われることにより、ビットコインが抱える問題を解消していこうというものだったはずですが、現在は状況が一変しています。

ブロックサイズが8MBに引き上げられたビットコイン・キャッシュ(BCH)に続き、ビットコイン・ゴールド(BTG)までも誕生しています。このような状況でSegwit2Xによるハードフォークを行い、ブロックサイズを1MBから2MBに上げること自体にあまり意味を感じられません。

Segwit2Xによるハードフォークが行われて、再びビットコインは分裂するのでしょうか?利害関係者の思惑と拡大するコミュニティーに翻弄されるビットコインの行方からしばらく目が離せませんね。

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